中学んときの立体凧の話は旧日記(つらら)時代に嫌というほど書いたけど,今思うとあれが僕の原点のように思う.
簡単に逸話を紹介すれば,
中1の学校祭にて立体凧というクラス対抗の競技があった.立体凧はいわゆるボックスカイト型で立方体の形をした箱を複数個組み合わせたカイトであり,その作り方は各クラス=先生毎にノウハウがあった.学校祭の準備期間には各教室の後ろや空いているスペースに大きな立体凧が置かれているという他の中学校には見られな光景が見られたことが今では懐かしい.僕をリーダーとする1-Cチームは独自のルートで得た解説書を元に他のクラスとは違う作り方で立体凧を作製した.作り方は解説書に載っているが,それは骨組みをどう組むかという程度.実際に作るとなれば作った者にしか分からないノウハウが必要となる.僕らは手探り状態で骨組みにラップを貼る技術を確立し,他のクラスには見られない高度な技巧による立体凧を完成させた(とはいえ中学生水準…).
ある者は骨組みを押さえるための固定方法を考案し,ある者はラップをピンと張るための持ち方を提案する.骨組みとなる檜の棒同士を固定するために必要十分な接着剤の量を身体で覚え,そして最後にはチーム内の全員がその知識を共有していた.
学校祭当日,あいにくの曇り空だったように記憶している.グランドには全校生徒が集まり,陸上競技でも始まるんじゃないかという雰囲気.いや,違う.空中競技だ.上空の風向きが怪しかったことははっきりと覚えている.
1年生から競技開始.競技は純粋に飛行時間で競われる.僕らは前日のテスト飛行で既にその瞬間の感動を知っていた.ひもを持つ僕が全速力で走り出すと同時に,凧は空中へと舞い上がる.縦横1.5メートルほどの大きさの立体凧が勢いよく飛び立っていく感動といったらない.他クラスの凧が次々と脱落していく中,我々 1-C チームの立体凧(サシバ号)はひたすらに上を目指した.
およそ3分ほどだったろうか.それは無限にも思える時間だった(次の日,手のひらがやけどあとだらけになったくらいにね!).
その後,2年生,3年生と競技は続いたが,どのクラスも30秒程度の飛行時間しか稼げず,結局1年生の,しかも体育大会は桁違いに最下位,定期テスト平均点でも群を抜いて最下位を記録していたあの 1-C がダントツの飛行時間で優勝したのであった.
簡単じゃねー(笑)
こんないかにも中学生らしい感動を得た僕がなぜにコンピュータなんぞにのめり込んでしまったのか.おそらく,リアルなものづくりには手間とお金がかかる.自由にモノを作ろうとしても決して満足のいく機材はない.その点,コンピュータならばその空間の中で神になれる.とにかくこれ.「その空間」=「仮想空間」にならなかったりするところが時代背景を反映しているというか,救われる点というか.
いずれにせよ立体凧作りは楽しかった.中学時代で一番の思い出であり,チームのメンバーの一人は今でも親友としてつきあいがあったりする.
ものづくりの楽しさをにわかに知ることができた中1の僕は,その10年後,ものづくりとデジタル世界との架け橋となる研究をしている.その経験が今の研究に生かされた部分なんてないに等しいわけだけど,自分の価値観のベースの一つにはものづくりがあるんだと気づいたことがなんとも…,うーん,そう,ほほえましい感じだ.
そういえばあの頃は「ぜってー大学なんていかねーよ」とか思っていたはずなんだが,今では大学院まで進んでいる有様で,人生って分からないもんだなとつくづく思う.